フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol1
残業代請求や解雇トラブルなど、労働問題が起こった場合には「労働審判」を利用すると解決に繋がりやすくなります。
労働審判とは、雇用者と被用者の労働トラブルを解決するための裁判所における手続きです。一般の労働訴訟よりも迅速に労働問題を解決できるケースが多く、多数の労働トラブルで積極的に利用されています。
この記事では労働トラブルを解決するための労働審判について解説します。
労働審判を利用したい労働者の方や労働審判を申し立てられた雇用者の方はぜひ参考にしてみてください。
労働審判の概要
労働審判は、労働者と雇用者の労働トラブルを解決するための専門的な手続きです。
労働審判で取り扱えるトラブルの内容
取り扱われるのは、労働者と雇用者間の労働トラブルに限られます。
たとえば以下のようなトラブルが取り扱われます。
- 残業代請求
- 未払い退職金や賞与の請求
- 解雇トラブル
- 雇止めのトラブル
- 退職強要や退職勧奨のトラブル
- 労災に関するトラブル
- 安全配慮義務違反に関するトラブル
- セクハラやパワハラで企業が適切な措置をとらなかった場合のトラブル(職場環境配慮義務違反)
- 労働条件の不利益変更のトラブル
一方、セクハラやパワハラのトラブルでも「被害者が加害者(同僚や上司など)へ損害賠償請求する」といった「労働者同士のトラブル」については労働審判を適用できません。
労働審判員が関わる
労働審判には裁判官だけではなく専門の「労働審判員」がかかわります。労働審判員は当事者から聞き取りを行って話し合いを調整したり、審理を行ったりします。
労働審判員は、労働者側の代弁者と企業側の代弁者から成り立ちます。労働者側については労働組合の役員などが参加し、企業側については経営者や人事担当者などが参加します。
迅速な審理
労働審判は原則として3回で手続きが終了します。
1回目と2回目は調停によって話し合いの解決を目指し、話し合いができない場合には3回目の期日を入れて、その後に「審判」が行われます。
労働審判の流れ
次に労働審判の流れをみてみましょう。
申立て
まずは申立人(多くのケースでは労働者側)から申立てが行われます。
労働者側は申立書と証拠書類などを裁判所に提出します。
申立て内容に不備がなければ、裁判所で労働審判員が選出されて労働審判委員会が組織されます。
相手方への呼出状と答弁書催告状の送付
労働審判申立てが受け付けられると、相手方(通常は企業側)へと第1回期日の呼出状と答弁書催告状が送付されます。このとき、申立人が提出した証拠書類も一緒に送られます。
企業側は定められた期限までに答弁書を提出しなければなりません。
答弁書の提出
企業側から答弁書が提出されます。答弁書には企業側の意見や申立人への反論などが記載されます。
第1回期日
第1回期日では、申立書や答弁書に書かれた内容をもとに、労働審判員も含めて質問や議論などが行われます。
労働審判委員会からの質問
まずは労働審判委員会から当事者へ質問が行われるのが一般的です。
申立書や答弁書に記載されていることをもとにした質問で、労働審判員がこれらを読んで気になったことなどが尋ねられます。
双方からの事情聴取
次に片方ずつから意見聴取が行われます。どこまでなら譲歩できるのかなど、調停による話し合いでの解決ができないか模索します。
心証開示と調停で解決できる可能性の検討
労働審判委員会が当事者へ心証を開示し、当事者はそれを前提に調停を成立させるのか審判を継続するのかを判断します。
第1回調停で解決できなかった場合には第2回目の期日が入ります。
第2回期日
第2回目の期日も、引き続いて話し合いが行われます。期日までに作成された準備書面をもとに、労働審判委員会から質問や片方ずつからの聞き取りがあり、調停による解決が模索されます。
第3回期日
第2回期日でも解決できなかった場合には第3回目の期日が開かれます。
審判
第3回目の期日でも解決できなかった場合には審判が下されます。
異議申立て
審判の内容に不服がある当事者は異議申立てができます。すると審判は効力を失い、訴訟へと移行します。
労働審判を申し立てられたときの対処方法
企業側が労働審判を申し立てられた場合には、迅速に答弁書を準備しなければなりません。
労働審判はスピード感を重視した手続きなので、呼出状の送付後第1回期日まではあっという間です。会社は期限までに答弁書と証拠を提出しなければなりません。
労働審判において、答弁書は会社にとって最重要な書類ともいえます。労働審判員会は、第1回期日までに提出されている答弁書などの書類や証拠を見て心証を形成するからです。
適当な書面を提出してしまうと、第1回期日の時点ですでに不利になってしまうおそれがあります。
会社側が労働審判を申し立てられた場合、必要十分で説得的な反論をすることが極めて重要となってくるのです。
困ったときには弁護士に相談すると良いでしょう。
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