フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol1
「薬機法(旧薬事法)や医療法のチェックやライティングは、医師に監修を受けていればOKでしょ?」
「看護師さんや技師さんなどでも医療職なら薬事法や医療法がわかるのでは?」
あなたも、そのように考えているのではないでしょうか?
しかし、このような考えは大間違いです。そのままの認識でライティングをしたり監修業務を受けたり、あるいは記事を公開したりすると「薬機法違反」「医療法違反」となる可能性が高いです。
すると、賠償問題が発生したり、最悪の場合には逮捕されて刑罰を与えられたりする可能性もあるので注意が必要です。
薬機法や医療法に対応した記事を書くには、医療知識ではなく法律知識が必要です。
今回は、薬機法や医療法と医療職、法律職の関係についてご説明します。
1.薬機法、医療法は広告表現の法律
あなたは、薬機法や医療法というと、どのようなことを定めている法律だと思いますか?
薬機法は医薬品や医薬部外品、化粧品の取扱いやそれらの広告表現について定めている法律です。
医療法は、病院や診療所・助産所の開設や管理方法、広告表現などについて定めている法律です。
ウェブライティングで重要になるのは、「広告表現」の部分です。
広告表現というのは「薬品や化粧品などの説明方法」「医療や医療機関の説明方法」のことです。
たとえば「この育毛剤は頭皮に働きかけるので、髪の毛が生えてきやすいです」「この治療法を適用すると腰痛が治ります」などの「表現方法」が規制対象です。
2.医学的に正しいかどうかは関係ない
一般的に誤解されているのは、こういった法律が「医学的に正しいことを書かなければならない」と思われていることです。
過去に大手のキュレーションサイトが、医学的に間違った内容を書き立てて問題になった経緯なども影響しているのかもしれません。
確かに「医学的に正しい」ことは重要です。
しかし、薬機法や医療法では「医学的に正しい」だけでは足りません。
「医学的に正しくても違法(薬機法違反、医療法違反)」な表現が山のようにあります。
医師が監修して、医学的には正しい内容を書いていても、薬機法違反、医療法違反になってしまいます。記事の公開者やライター、監修者が処罰対象となります。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
3.薬機法の規制内容
薬機法にも医療法にもとても細かい定めがあるので、とてもここでは書き切れないのですが、かいつまんで説明をします。
薬機法は、医薬品を効果効能の強さにより、3種類に分類しています。そして、医薬品ほどの効果はないけれどそれに近い効能を持つものを「医薬部外品」としています。
また、「化粧品」についても一定の表現方法を認めています。
医薬品は、きちんと厚生労働省の認可を受けた薬品です。そこで、認められた効果効能については表現してもOKです。たとえば「吐き気を改善」という機能が認められていたら、そのことは書いてもかまいません。
ただし、認定されていない効果効能を書くと違法です。たとえその効能が本当にあるとしても書いてはいけません。
医薬部外品の場合、医薬品ほどの効果が認められないので、基本的に「症状を改善する効果」の表現が認められません。
たとえば医薬部外品の化粧水で「アトピーが治る」と書いたら違法です。本当にアトピーが治るとしても、医師が「これはアトピーに効く化粧水だ」と思っていても、そのようなことを書いたら薬機法違反です。
医薬部外品では、一定の認可を受けた効果効能の表現が認められますが、それは「症状を改善する」ものではなく、「症状を緩和する」ものにとどまります。たとえば医薬部外品の化粧水の場合「肌に潤いを与える」「ニキビを防ぐ」程度の表現ならOKです。「ニキビが治る」はNGです。本当にニキビが治る医薬部外品で医師が太鼓判を押していても、そう書いたら薬機法違反です。
「アンチエイジング」や「肌のターンオーバーの改善」なども全部NGです。
医薬部外品ではない単なる化粧品の場合には、「ニキビを防ぐ」のような記載すらできません。
同様に、健康食品やサプリメントも医薬品や医薬部外品ではないので「整腸作用」や「痩せる」などの効果を書くと薬機法違反となります。
これらの決まり事は、医学的な知識とは関係ありません。しつこいようですが、医学的に正しくても、認められた表現方法でなければ薬機法違反となります。
患者の体験談や使用前使用後のビフォーアフター写真なども違法になる可能性が高いです。嘘の体験談や写真ではなく、真実の内容や写真でもNGです。
4.医療法の規制内容
次に、最近話題になることの多い医療法について説明します。
医療法で何が問題かというと、最近、医療機関のウェブサイトが広告規制の対象になったことです。
実は医療法は、医療機関の広告方法を非常に厳しく規制しています。広告して良いのは、ほんの一部の事項のみです。
たとえば「糖尿病専門外来」という表現すらもNGです。「小児科医」や「外科医」も許されません。「一体何がダメなのかわからない」という感じではないでしょうか?
しかし、「認められていない表現」だからダメなのです。かなり問答無用です。
医師個人が行った手術の件数も書いてはいけませんし、未承認医薬品によって治療を行っていることも記載してはいけません。真実でもNGです。
また、他の医療機関と比較する広告も禁止されます。たとえば「うちの医院のは、他院よりも回復率が高い」と書いたらNGです。その内容が真実でも違法です。
治療効果すら書いてはいけません。「術後回復率〇〇%」と書いたらアウトです。
患者の体験談や、治療前治療後のビフォーアフター写真も規制対象です。
以上のように、薬機法や医療法は、「医学的に正しい」かどうかは全く関係ない法律です。
医師が医学的に正しいことを書いていても、表現方法が間違っていたら薬機法、医療法違反になります。
改正医療法については、厚生労働省がこのようなガイドラインを出していますが、これにすべて正確に対応できないと違法なのです。
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_4.pdf
まともな医療機関は、とてもこうした法律に対応できないので、ウェブサイト構築の際に弁護士に相談しています。
医師の方も、このようにコメントして下さいました。これは当然のことで、正しい態度だと思います。
医師代表するわけではありませんが、いちコメントです。
薬機法や医療法への対応は医師はまったくわかりません。
これはわたしだけでなく、おそらくすべての医師に当てはまります。診断治療のしかたは知っていますが、広告はまったく別物。医師の仕事ではないのです。
法律のプロにおまかせです。 https://t.co/HSkVRSLWda
— ねこまね@勤務医ブロガー (@nekomane3260) 2018年7月18日
こちらも真実ではないでしょうか。
これなんですよね。だからまともな会社は薬機法専門の弁護士やコンサルに顧問になってもらったり、社長や担当者もセミナーで勉強してる。特に美建業界では、林●先生のコンサル受けたり。 https://t.co/SNHbn4d8qV
— F氏@剣術家✕セールスライター (@solo_starting) 2018年7月18日
5.医療職が薬機法、医療法に対応している問題
ところが最近、医療職の方などが「薬機法のチェック、監修」などを行っているのを目にすることがあります。
このような状況を見ると、非常にまずいように感じます。
薬機法違反には罰則もあります。5年以下の懲役刑または500万円以下の罰金刑です。
ライターや監修者であっても責任を問われます。
また、間違った記事を公開すると、クライアント側が責任を問われます。その場合、クライアントは、間違った記事を納品したライターや監修者に損害賠償請求をするでしょう。その場合、返金だけでは済まず、企業が被った莫大な損害を賠償しなければなりません。ライターや監修者は補填できるのでしょうか?
そのようなリスクを負いたくないのであれば、正確な知識を会得するまでこの種の仕事は受けない方が良いのではないかと思っています。
また、依頼する側も、このことをしっかり認識していただきたいです。
薬機法や医療法についての記事作成や監修を依頼するならば、医療職ではなく法律職(弁護士)を選ぶ必要があります。しかも、相当きちんと勉強して理解している人でないと危険です。
医師でも薬機法、医療法をわかっていませんし、医師が弁護士に監修を依頼している現実をお忘れなく。
医師でもない看護師や技師などの医療職に薬機法チェックを依頼するのは、自殺行為ではないかと思います(もちろん、そういった方がきちんと法律を学んで理解しているなら問題ありませんが、勘違いしている方が多いのではないかと思います)。
なお、私自身も薬事法や医療法のチェックが可能ですが、はっきり言って細かいチェックが多く神経を使う上に、リスクも高く(刑事罰リスク、損害賠償リスク)コスパが悪いのであまり受任していません。
このようなこともあり、法律の素養のない医療職の方がきちんとチェック出来ているとは到底思えないのですよね…。実情は知らないですが。
ウェブ記事内容の向上と違法な記事の横行を避けたいと思い、この記事を書きました。何かの参考にしてもらえたら幸いです。
もしもウェブライティングをしていて損害賠償リスクなどに備えておきたいなら、弁護士保険に加入しておくことをお勧めします。
いつでも電話で弁護士に無料相談できますし、弁護士費用を保険に負担してもらえるので費用の心配が要りません。適切な弁護士を紹介してもらうことも可能です。
関心があったら、一度資料請求してみてください。
もしも既にトラブルになっていたり、弁護士に薬機法の相談をしたりしたい場合には、法律全般サポートの弁護士紹介サービスを利用してみてください。地域の弁護士を無料で紹介してもらえます。
フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol2
フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol3