企業法務

収支計画書の作成手順と書き方について

起業した後、収支を安定させて健全に経営を進めていくためには、収支計画書の作成が重要です。収支計画書は、金融機関から借り入れを行う際に利用されるので、説得力のあるものを作成しなければなりません。

ただ、具体的にどのようにすれば「良い収支計画書」を作成出来るのかがわからないこともあるでしょう。

そこで今回は、収支計画書の作成手順と書き方について、元弁護士のライターぴりかが解説します。

 

1.収支計画書とは

収支計画書とは、企業の収支予定を明らかにした書類です。

1年間の予定収入と予定支出を表にまとめて、具体的にどのくらいのお金が入ってくるのか、また出て行くのかを一覧にして、最終的に手元にどのくらいのお金が残るのかが書いてあります。

金融機関から融資を受けるときには、収支計画書を提出して、融資の可否を判断してもらうことになるので、会社の資金繰りのためにも非常に重要です。

 

それだけではなく、収支計画表があると、「売上げ目標」を立てやすくなりますし、支払いに際しても明確な基準ができるので、会社の健全経営に役立ちます。

また、収支計画表を作成する際には、売上げや経費、税金などについてきちんと考えて計画を立てることになるので、経営の指針を立てることにつながりますし、年度途中で資金不足に陥るリスクなども軽減できます。

 

このように、収支計画表は、会社が安全に経営活動を続けていくために非常に大切なものと言えます。

 

2.収支予定表の作成方法

次に、収支予定表の作成方法を説明します。

2-1. 1ヶ月ごとに計算する

収支計画表は、「1年分」を作成する必要がありますが、いきなり1年分を作ろうとするより、1ヶ月ごとに作成する方が良いです。

実際、業種によっては繁忙期とそうでない月がありますし、変動費については経費が高くかかる月とそうでない月もあります。そうした場合、1年分の計画を立ててからそれを12等分するよりも、1ヶ月ごとの収支を詳細に検討した方が説得的な収支計画書ができるからです。

まずは1ヶ月ごとの売上げと支出を計算しましょう。

 

2-2.経費と借入金の明細を記入する

収支計画書を作成する際には、「支出」の把握が大切です。具体的には、以下の3種類です。

  • 経費
  • 借入金
  • 利息の返済

 

そして、経費には、「固定費」と「変動費」があります。

 

固定費とは、毎月決まった金額がかかる経費のことです。金額が決まっているので予定が立てやすいので、経費を考える場合には、まずは固定費から検討すると良いでしょう。

具体的には、役員報酬や従業員への給料、地代家賃や保険料、固定資産の減価償却費などです。

 

変動費とは、月によって変動する費用のことです。具体的には水道光熱費や消耗品費、広告宣伝費や仕入れ代金、臨時アルバイトの人件費などがあります。

 

これらの固定費と変動費の予定額を決めていると、企業の抱えるいろいろな問題が見えてきます。たとえば、固定費がかかりすぎていることがわかる場合や、固定費と変動費のバランスが悪いケースなどがあります。こうした場合、かかりすぎている固定費を削減する目標を立てられますし、固定費の一部を変動費に置き換えることを検討できるケースもあります。

 

融資を受けている場合には、月ごとの借入金の返済額と支払い利息の明細を明らかにしましょう。

 

2-3.売上予定を決定する

収支計画表の作成においては、売上げ予定額の算出も必要です。

これについては、業種ごとに目安の計算方法が決まっていて、たとえば、日本政策金融公庫の定める目安によると、以下の通りです。

 

  • コンビニなどの販売業の場合には、1平方メートルあたりの売上高×売り場の面積
  • 美容室や飲食店などのサービス業の場合には客単価×席数×回転数
  • 自動車販売業やビルの清掃業、化粧品販売業などの場合には、従業員1人当たりの売上×従業員の人数
  • 部品製造業や運送業、印刷業などの場合には、設備ごとの生産力×設備数

 

これを使って、1ヶ月分の売上げ予定を計算しましょう。

 

2-4.12ヶ月分の収支と売上げ額をまとめる

1ヶ月分の収支と売上げ予測を立てることができたら、12ヶ月分をまとめます。

このとき、12ヶ月分がすべて均等に同じ売上げだと説得力がないので、標準月、閑散月、繁忙月で、売上げを分けて計画を立てることをお勧めします。

月による変動がない業種の場合には、12ヶ月を通して、だんだん売上げ額が上がっていくように記載すると、金融機関の印象が良くなりやすいです。

 

2-5.税金額を差し引く

売上げと経費が計算できて収支が明らかになったら、最終的に税金を差し引かなければなりません。法人の場合には、法人税や住民税、事業税がかかるので、トータルで35%~40%程度の税金がかかることになります。

これを差し引いた金額が、最終的に手元に残る金額となります。

 

以上のように、収支予定表は、金融機関からの融資を受ける場合や効果的な事業計画を立てるために非常に重要です。効果的な作成方法がわからない場合には、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

ABOUT ME
福谷陽子
弁護士としての経験を活かして、法律・不動産の専門記事を執筆。多くの法律事務所様や不動産会社様、法律・不動産系メディア様からご依頼をお受けしております。 難しい法律や税務、不動産の知識をわかりやすく伝えるのがモットー。 何より目指すのはお客様の利益です。

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