企業法務

事業再生ADRとは?中小企業の経営が悪化した場合の対応方法

企業経営を行っていると、どうしても財務状況が悪くなり、経営の維持が難しくなるケースがあります。こうした場合、早めに事業再生の手続きをとる必要がありますが、事業再生の方法にもいろいろな種類があります。

そのようなとき、事業再生ADRを利用すると、効果的に事業再生を行うことができます。

今回は、便利な「事業再生ADR」について、元弁護士のライターぴりかがご説明します。

 


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1.ADRとは

事業再生ADRと言われても「ADR」って何?と思われるかも知れません。

そこで、そもそもADRとはどのようなものかについて、理解しておきましょう。

 

ADRとは、裁判外の紛争解決手続きです。裁判所を使わずに民事的な紛争を解決するための手続き全般を意味するもので、国の法務大臣によって認証を受けた、公正な事業者が関与することによって紛争の解決が図られます。(ただし、非認証機関によるADRもあります)

ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が根拠となっている制度であり、さまざまな分野で活用されています。身近な例では交通事故事件を解決するためにもADRが利用されています。

このような中、企業の「事業再生」のためい利用されるADRが「事業再生ADR」です。

 

2.事業再生ADRの概要

事業再生ADRは、平成26年1月20日に施行された産業競争力強化法にもとづく制度です。

経営に行き詰まった企業が円滑に事業再生を進めるため、ADR機関が間に入って企業と債権者との間で調整を行います。

 

事業再生ADRで調整手続きに関与できるのは、経済産業大臣によって認証を受けた「特定認証紛争解決事業者」です。事業再生についての専門知識を持っていて、実務経験がある人が所属している必要があります。具体的には「事業再生実務家協会」がこの特定認証紛争解決事業者として、事業再生ADRに関与しています。

 

事業再生ADRを利用するとき、債務者が予め「事業再生計画案」を作成しておきます。そして、「債権者集会」において、事業再生計画案を決議にかけます。可決されたら、その内容にしたがって事業再生をすすめることができます。

3.事業再生ADRのメリット

事業再生ADRは、裁判所を利用しないので、私的整理に近い性格を持ちます。非公開の手続きで、借入先の金融機関のみを相手にして協議を進めますので、取引先を巻き込まず、企業が信用を失いにくいです。

メインバンク以外の金融機関との調整もすすめやすいですし、上場企業であれば上場を維持したまま事業を継続できます。

 

また、事業再生ADRは、私的整理のデメリットも克服しています。たとえば、認証を受けたADR機関が間に入って手続きを進めるため、債権者による債務の減額や放棄を受けやすいです。単なる私的整理の場合には、金融機関との交渉が難しくなることがありますが、公正な第三者が間に入ってくれることによって話し合いを進めやすくなっています。

つなぎ資金の借り入れもできますし、債務免除を受けた場合には、税制上の優遇措置を受けることも可能です。

このように、事業再生ADRは、私的整理の良いところと法的整理の良いところをミックスした制度であり、非常に利用価値が高いです。

 

4.事業再生ADRのデメリット

事業再生ADRには、デメリットもあります。それは、債権者全員の合意が必要になる点です。1社(1人)でも反対するものがいたら、ADRによる解決はできないので、特定調停やその他の法的手続きに移行します。

事業再生ADRを利用しても、必ず話合いが成立して問題が解決できるわけではないので、注意が必要です。

 

5.事業再生ADRの進め方

事業再生ADRをすすめるには、どのようにしたら良いのでしょうか?

まずは、事業再生を行いたい企業が、特定認証紛争解決事業者(事業再生実務者協会)に対し、事業再生ADRの申請をします。受理されたら、手続きが開始します。

ADR手続きが始まると、ADR事業者が債権者に対し、「一時停止の通知書」を送付します。これによって、債権者から破産や特別生産、再生手続きや更生手続きなどが申し立てられなくなります。

そして、債権者集会が開かれて、債務者である企業が集まった金融機関などに対し資産や負債の状況、策定した事業再生計画案の概要を説明します。債権者からの質疑応答や意見交換が行われます。

事業再生計画案が公正か、経済的合理性があるかなどについても協議が行われます。

最終的に、債権者が事業再生計画案に同意するかどうかの意見をとります。全員が同意すれば協定が成立して、事業再生計画案通りに再生手続きを行うことができます。

1社でも反対したら、法的手続きに移行します。

 

以上のように、事業再生ADRを利用すると、効果的に事業を続けられるケースがあります。

企業の経営に行き詰まったら、債務整理に詳しい弁護士に相談してみると良いでしょう。

ABOUT ME
ぴりか
弁護士としての経験を活かして、法律記事を中心にライターとして活躍中。多くの法律系ポータルサイトや法律事務所様などからご依頼をお受けしております。弁護士事務所向けのコンサルタント業務も行っておりますので、お気軽にご相談下さい。 ツイッターで情報発信しているので、お気軽にフォローして下さいね!

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