企業法務

中小企業が注意すべき債務超過と倒産の関係について

中小企業を経営している場合、赤字や債務超過には神経質になるものです。

それは、経営者が「倒産」を恐れているからでしょう。ただ、赤字や債務超過になったとしても、当然に「倒産」するものではありません。

そこで今回は、中小企業経営者が知っておくべき債務超過と倒産の関係について、元弁護士のライターぴりかが解説します。

 

1.赤字とは

経営者であれば、自社の収支が赤字になることを避けたいと考えるのが普通ですが、そもそも赤字とは、どういった状態なのでしょうか?

赤字は、売上げから経費や借入金返済、税金などの支払いを差し引いた金額が、マイナスになっている状態です。利益が出ていないので、純資産が減少してしまいます。

ただ、赤字になっても資産が残っている間は、会社は倒産しません。個人で言うと、貯金を食いつぶしているような状態が続くだけです。

赤字決算があっても、純資産が残っている間に業績を回復したら企業が倒産することはありませんし、債務超過になることもありません。

 

2.債務超過とは

次に、債務超過とはどのような状態なのでしょうか?

これは、企業の純資産がマイナスになってしまった状態です。

この場合、企業が抱えている借金その他の負債の額が、企業の資産よりも大きくなっているので、企業の資産をすべて売却したとしても、債務の全額を支払うことができません。

そこで、債務超過になると、倒産のリスクが発生してきます。

ただし、債務超過になったとしても、必ずしも倒産するわけではありません。

資産よりも負債が大きいとしても、収益が上がっていてきちんと支払いや返済ができている限りは、営業を継続していくことができます。

個人の場合、多額の借金があって貯金が0円でも、高収入の人なら順調に借金を返済できることがありますが、それと同じことが企業にも言えます。そこで、企業が債務超過に陥った場合でも、慌てず収益性を高めて債務を返済していけば、いずれは負債額が減って債務超過状態が解消されて、健全に経営を続けられるようにもなります。

 

3.倒産とは

それでは、倒産とはどのような状態なのでしょうか?以下で赤字や債務超過との関係も交えながら、見てみましょう。

3-1.倒産するケース

倒産とは、企業が借入金を返済出来なくなった状態のことです。

企業は、売上げから経費その他の支払をしなければなりませんが、その支払いができなくなった場合に倒産の危険が訪れます。

支払いが出来ない場合の典型例は、売上げが上がらず(収益が足りず赤字)、かつ今持っている資産からも債務の支払いができない(債務超過)ケースですが、それだけではありません。

収益が上がっていて黒字であっても、それを超える多額の支払いがあって、財務状況を圧迫している場合には倒産の可能性があります。

また、企業内にある程度の資産があっても(債務超過ではない)、それを即金に変えることができず、必要な支払いができない場合には、やはり倒産の可能性があります。

このように、赤字や債務超過ではなくても、放漫経営をしていると倒産のリスクがあることは、経営者であれば押さえておく必要がありますね!

 

3-2.倒産という言葉の意味

倒産というとき、いろいろな状況を表すので、注意が必要です。

まず、一般的には銀行に対して2回不渡りを出した場合を指したケースを「倒産」ということがあります。これは、銀行に対して2回不渡りを出すと、銀行取引を停止されるので、事実上企業経営の継続が難しくなると考えられるからです。

ただ、実際には銀行に2回不渡りを出しても、必ずしも会社経営が破綻するとは限りません。

次に、「私的整理」や「法的整理」をした場合を意味することがあります。

 

会社の私的整理とは、銀行などの債権者と話し合って、債権の減額や免除を受けるなどして再生をすすめる方法です。この方法をとると、企業の経営者を交代せずに企業を再生することが可能です。認証ADR事業社に間に入って債権者と話し合いをすすめる事業再生ADRも、私的整理の1種に位置づけられます。

 

これに対して、会社の法的整理とは、裁判所を利用した手続きによって、会社の事業再生や清算を行う方法です。

法的整理には、再生型の手続きと清算型の手続きがあります。再生型の手続を利用すると会社の事業を継続することができますが、清算型の手続きをとった場合には会社は消滅するので事業の継続は不可能になります。

再生型の法的整理手続きには、民事再生と会社更生がありますが、中小企業の場合には、民事再生を利用することの方が多いです。

清算型の法的整理手続きには、特別清算と破産手続があります。

 

以上のように、そもそも赤字や債務超過状態であっても、いきなり倒産するものでもありませんし、倒産状態になったとしても、その後いろいろと事業再生する方法はあります。

早く対処すればするほどとりうる手段も多くなりダメージも少なくできるので、経営状態が芳しくないと感じたら、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

ABOUT ME
福谷陽子
弁護士としての経験を活かして、法律・不動産の専門記事を執筆。多くの法律事務所様や不動産会社様、法律・不動産系メディア様からご依頼をお受けしております。 難しい法律や税務、不動産の知識をわかりやすく伝えるのがモットー。 何より目指すのはお客様の利益です。

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