フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol1
2019年12月31日、特別背任罪や金融商品取引法違反で起訴されていた元日産社長のカルロス・ゴーン社長が国外逃亡してレバノンへ入国したと報じられました。
保釈保証金は15億円だったようで、そのお金を捨てても国外へ逃げたかったのでしょう。
保釈中に海外逃亡なんてできるのか?
今後裁判はどうなるのか?
いろいろな疑問がわきますよね。
今回は日産のゴーン社長の保釈中の国外逃亡事件を元に「保釈」とはどういった制度なのか解説します。
保釈とは
保釈とは、起訴されて刑事裁判になった被告人が仮に身柄を解放してもらう手続きです。
刑事裁判になっても「勾留」が続いていたら、本来被告人は「拘置所」で身柄拘束を受けたままです。
ただし一定の要件を満たし保釈保証金を払えば「保釈」されて、自宅に戻って普通に生活できるようになります。
保釈は無罪放免とは異なり、「仮に解放されただけ」です。刑罰が決まり、懲役や禁固の実刑となれば刑務所に収監されます。
執行猶予や罰金、無罪などの判決が出た場合にはそのまま外で過ごすことが可能となります。
保釈できるのは起訴後のみ
一般で誤解されているケースもありますが「保釈」できるのは「起訴されて刑事裁判になった後」だけです。逮捕直後は保釈できません。
逮捕後に「勾留」されると最大23日間警察の留置場で身柄拘束されて取り調べなどを受けます。その間は基本的に外には出られませんし保釈も認められません。
ゴーン社長は何件かの罪で起訴されているので23日よりも長い間警察の留置場で身柄拘束されていました。
起訴されて弁護士に頼んで保釈申請し、ようやく認められて外で生活をしていたのです。
保釈が認められる要件
保釈が認められるには最低限、以下の要件を満たす必要があります。
「逃亡のおそれがない」
「証拠隠滅のおそれがない」
上記のおそれがある状態で保釈すると犯人が逃げてしまったり証拠隠滅したりする可能性があるので、当然ですよね。
今回の件でも、裁判所はゴーン氏が「逃亡しないし、証拠隠滅もしないだろう」と考えて保釈の許可を出したのです。
保釈の条件について
保釈されるときには一般的に「条件」をつけられるケースが多くなっています。
多いのは「被害者に近づかない、証人威迫しない、居所を移転しない」などです。
ゴーン氏の場合「国外に行かない」ことが条件になっていたようです。
今回、ゴーン氏は裁判所からつけられた保釈条件を破って逃亡したことになります。
ゴーン氏の保釈保証金はどのくらい?
保釈されるには「保釈保証金」を支払う必要があります。保釈保証金とは、保釈されるために裁判所に一時的に納付するお金です。
問題を起こさず何事もなく判決が言い渡されたら返してもらえます。有罪でも保釈保証金は戻ります。
ただし途中で逃亡した場合や条件を破った場合などには没収される可能性が高くなっています。
保釈保証金の相場
一般的な保釈保証金の相場は、だいたい150万円~200万円程度です。
通常ならこのくらいのお金を払わされたら「没収されたら困る」と思って条件を破らないからです。
ゴーン氏の保釈保証金
ゴーン氏の場合、保釈保証金の金額はなんと「15億円」です。
一般人の私たちからすると想像もつかない金額ですね!
しかしゴーンさんはその15億円も捨てて国外逃亡しました。
おそらくゴーンさんにとっては「はした金」だったのでしょう。
裁判所はゴーン氏の逃亡を防ぐため、もっと高額な保釈保証金を払わせるべきだったのかも知れません。
保釈中に逃亡したらどうなる?
保釈中に逃亡したら、保釈保証金を没収される可能性が極めて高くなりますし、保釈が取り消されます。
また当然「情状」が極めて悪くなるので、より重い刑罰を適用されることとなるでしょう。
しかし刑罰を適用するには刑事裁判を開かねばなりません。今のようにレバノンにいる状態では刑事裁判を開けないので有罪判決を下すこともできません。
レバノン政府と身柄引き渡しの交渉をしていくしかないでしょう。
なお既に起訴されているので「公訴時効」は問題となりません。公訴時効とは、犯罪が行われてから一定期間内に起訴されない場合に起訴されなくなる制度です。
ゴーン氏の裁判が時効によって終わることはありません。
逃亡を阻止できなかったのか?
今回、ゴーン氏の国外逃亡を阻止できなかったのか?といわれています。
実際のところは分かりませんが、準軍事的な機関が関与していたという話しもあり、かなり専門的な方法で逃亡が実行されたようです。
ただ「楽器を入れるケースに入って出国した」という話しもあり、それならX線撮影でわかったのでは?という気もするので何とも言えないですね。
どちらにしても保釈中に国外逃亡されるなど前代未聞ですし裁判所だけではなく日本司法全体の恥といえるかもしれません。日本の司法制度が外国からいかに軽く見られているか、またこのことでさらに軽く見られる原因になりそうで残念に思います。
フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol2
フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol3