フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol1
所得税や相続税の申告をしていない場合、放っておくと時効になって払わなくて良くなるのでしょうか?
確かに時効が成立するケースもありますが、実際に時効によって税金を逃れるのは極めて困難です。
また税金の時効には2種類があり「税金を課税する権利」と「税金を取り立てる権利」とで、適用される時効が大きく異なります。
混同されている記事も多いので、鵜呑みにしないように正しい知識をもっておきましょう。
今回は税金の時効について「賦課権」と「徴収権」に分け、本当に税金の時効が成立することがあるのか、解説します。
無申告で不安を抱いている方、税務署から督促が来ている方などぜひ参考にしてみてください。
賦課権と徴収権の違い
税金には「賦課権」と「徴収権」があります。
賦課権とは
賦課権とは、税務署や国税局が国民に税金の支払い義務を課する権利です。
たとえば所得税や相続税の申告をしていない場合、税務署が税務調査を行って税額を確定し、「○○円の税金を払いなさい」と金額を確定します。
このように「払うべき税額を確定して請求する権利」を賦課権と言います。
税務署が「払うべき税額」を一方的に決めて国民に「○○円支払いなさい」と請求する権利と理解しましょう。
賦課権が問題になるケース
- 無申告…税務署に賦課権のある間は、税務調査が行われて税金の納付を命じられる可能性がある
- 申告したが、内容が間違っている…税務署に賦課権のある間は、税務調査が行われて正しい税額の納付を命じられる可能性がある
徴収権とは
徴収権とは、税務署や国税局が確定した税額を取り立てる権利です。
たとえば所得税や相続税の申告をして税額が確定しているにもかかわらず支払をせずに放置していたら、税務署から督促状が来ます。
それでも放置していると、給料や預貯金などを差し押さえられてしまいます。
このように「税金を払っていないときに取り立てる権利」を徴収権と言います。
徴収権が問題になるケース
- 申告によってすでに税額が決まっているが、支払っていない場合…徴収権が時効になると、差し押さえを受ける可能性がなくなります
- 更正決定があって税額が確定したが、支払っていない場合…徴収権が時効になると、差し押さえを受ける可能性がなくなります
賦課権と徴収権に適用される時効制度はまったく異なるので、分けて理解しましょう。
賦課権の時効(除斥期間)
突然ですが、実は賦課権の期間制限は時効ではありません。正確には「除斥期間」と言います。
除斥期間は更新されず、所定の期間が経過したら当然に権利が失われます。
時効は途中で更新される可能性がありますが、除斥期間は所定の期間が経過すると問答無用で権利が失われてしまうのです。
原則は5年
賦課権の除斥期間は原則として「法定申告期限から5年」です。相続税や所得税などの期限から5年が経過したら、それ以前の税金について納付を命じられる可能性はなくなります。
そこで税務調査も過去5年分を調べられるケースが多数となっています。
贈与税の除斥期間は6年
なお贈与税の場合には「法定申告期限から6年」になります。
不正な税逃れの場合には7年
ただし「偽りや不正」によって税金を逃れようとしたり還付を受けたりした場合、除斥期間は法定納付期限から7年になります。
あえて虚偽の申告をしたり不正な方法で税逃れをしたりすると、過去7年分の税金を調べられて課税される可能性があります。その場合には「重加算税」がかかって税額が大きくアップしてしまうでしょう。そのようなことにならないよう、税金は正しく計算してきちんと納めるようにしてください。
徴収権の時効
確定した税金を取り立てるための「時効」は、除斥期間ではなく純粋な時効です。
国税の時効は「納期限から5年」です。
たとえば相続税の場合、相続開始後10ヶ月が納期限なので、そこから5年が経過したら「差し押さえ」によって財産を没収される可能性はなくなります。
ただし徴収権には「更新」が適用されるので注意しなければなりません。更新とは、途中で一定の事情が発生することで時効期間が巻き戻されることです。
たとえば3年後に時効が更新されると、その時点からさらに5年が経過しないと時効は成立しません。
何度も更新し続けることにより、永遠に税金の時効が成立しない可能性もあります。
税金の時効は「税務署が督促する」だけで簡単に更新されます。
納税者へ「督促状」を1通送るだけで更新されるので、時効が成立する可能性は「ほとんどない」といって良いでしょう。
税金を払えないときには、無視するのではなく税務署に相談すべきです。
どうしても払えないときには、事情によって「納税の猶予」や「換価の猶予」を適用してもらい、差し押さえを待ってもらえる可能性もあります。
最終的に生活保護を受ければ税金を滞納していても待ってもらえますし、3年が経てば支払い義務はなくなります。
放っておくのが一番悪いので、税金を払えないときには早めに税務署に連絡しましょう。1人で連絡するのが怖い方は、税理士に相談してみてください。
無申告、税務調査が心配な方へ
税金の時効について調べているあなたは、もしかして無申告や過少申告をしていて税務調査をおそれているのではないでしょうか?
近年、税務署は無申告案件に力を入れており、調べられると高額な加算税を課される可能性が濃厚です。加算税とは、無申告や過少申告していたため、通常よりも高額な税金を課される制度です。
放っておくと税務調査により、5~7年分の高額な税金を払わねばなりません。そうなる前に自主的に申告を行いましょう。
無申告で税務調査が心配な方や税務調査の連絡を受けた方は、早めに税務調査に詳しい税理士に相談してみてください。
税理士にもいろいろなタイプの方がおり、すべての税理士が税務調査に強いわけではありません。
特に「元国税調査官」の税理士の中に税務調査に詳しい方が多くおられます。国税調査官の考え方や傾向を知っているので、より効果的に対処してくれるでしょう。
困ったときには元国税調査官の税理士に相談してみるようお勧めします。
松嶋税理士は、元国税調査官の税務調査専門税理士です。
税金のプロである税理士からも税務調査の相談を受けるような「税務調査のエキスパート」といえます。無申告や税務調査が心配な方にはうってつけといえるでしょう。
税金の時効を心配しているなら、今すぐ松嶋税理士に相談の連絡をしてみてください。きっとベストな解決方法を提案してくれるでしょう。
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