フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol1
会社の経営状態が悪化した場合には、早期に事業再生を行う必要があります。このとき、自社のみの力で再生をすすめるのは難しいことがありますが、国によって事業再生の援助を受けられる「中小企業承継事業再生計画」という制度があります。
これを利用すると、税金負担が軽減されたり金融機関からの支援が受けられたりするメリットがあります。
今回は、国の認定によって事業再生を行うことができる中小企業承継事業再生計画について、元弁護士のライターぴりかが解説します。
1.中小企業事業再生計画の概要
中小企業事業再生計画とは、どのようなものなのでしょうか?
これは、国の援助により、経営状況の悪化した企業が再生するための手続きです。自国の産業の競争力を高めるために制定された「産業競争力強化法(平成26年1月20日施行)」にもとづく制度です。
まずは、経営状況が悪化した企業において、財務状況が悪化している事業と収益性のある事業を切り離します。そして、収益力のある部門については事業譲渡や会社分割によって新会社に承継させます。そして、不採算部門については旧会社に残し、旧会社を特別清算したり破産させたりすることにより、債務の放棄をしてもらいます。
このことによって、収益性の高い事業については残すことができて、不採算部門は閉じ、債務については放棄を受けることができて、事業再生を進めることができます。
新会社のことを第2会社というので、「第2会社方式」と言うこともあります。
中小企業事業再生計画を利用するためには、経済産業局に申請を出して、認定を受ける必要があります。
2.中小企業事業再生計画の3つの効果
中小企業事業再生計画を利用すると、以下の3つの効果があります。
2-1.営業のために必要な許認可を承継できる
もともとの会社が許認可を受けて事業を行っていた場合、事業再生によって設立された新会社が営業を継続していくためには、許認可を必要とするケースがあります。このような場合、新会社は、本来なら許認可を取得しなおさないといけないはずですが、そうすると、営業期間に空白期間ができてしまいますし、費用もかかって不利益があります。
そこで中小企業事業再生計画を利用するときには、旧会社の事業についての許認可を新会社が承継できることになっています。
承継の対象となる許可は、以下の通りです。
- 旅館業法による許可〈旅館業法第3条第1項〉
- 一般建設業や特定建設業の許可〈建設業法第3条第1項〉
- 貸し切りバスやタクシー(一般旅客自動車運送事業)の許可〈道路運送法第4条第1項〉
- トラック(一般貨物自動車運送事業)の許可〈貨物自動車運送事業法第3条〉
- 火薬類の製造、販売営業の許可〈火薬類取締法第3条、第5条〉
- 一般ガス事業・簡易ガス事業の許可〈ガス事業法第3条、第37条の2〉
- 熱供給事業の許可〈熱供給事業法第3条〉
- 食品衛生法による営業許可〈食品衛生法第52条〉
- 公園事業の認可〈自然公園法第10条第3項〉
2-2.税負担が軽減される
中小企業事業再生計画を利用すると、新会社の税負担が一部軽減されます。具体的には、新会社を設立した際にかかる登記費用(登録免許税)や、新会社に不動産の所有権を移転した場合にかかる登録免許税、不動産取得税が減額されます。
資本金にかかる登録免許税は0.15%が0.1%に減額されますし、資本金の増加については0.7%が0.3%となります。
不動産登記の登録免許税は0.8%から0.2%となりますし、不動産取得税は土地については3%が2.5%となり、建物については4%が3.3%となります。
2-3.金融機関による支援
事業再生では、新会社による事業承継や設備投資などのため、新たな資金調達が必要なケースもあります。こうした場合、中小企業事業承継制度を利用すると、金融機関からの支援を受けることもできます。
具体的には、日本政策金融公庫から、基準金利0.9%の低金利で融資を受けることができます。また、中小企業信用保険が拡大されたり(普通借り入れなら2億円、無担保なら8000万円、特別小口なら1250万円)、3億円を超える資本金の企業も出資できるようになったりします。
3.認定要件
中小企業事業承継制度を利用するためには、経済産業局による認定を受ける必要がありますが、そのためには以下の通りの認定要件があります。
- 過大な債務などがあって財務状況が悪化している
- 計画期間が終了する時点において、事業収支や財務状況が改善する
- 会社分割や事業譲渡によって旧会社から新会社へ事業を承継し、承継後には旧会社を清算する
- 公正性な手続である再生支援協議会やRCC企業再生スキーム、事業再生ADR、中小企業再生支援機構、私的整理ガイドライン、民事再生法等)を利用する
- 新会社が適切に資金調達計画を作成している
- 新会社が営業に必要な許認可を保有しているか、取得見込みがある
- 従業員が約8割以上確保される
- 労働組合へ説明するなどして、従業員と適切に調整されている
- 売掛金の処理などについて、取引先企業に配慮している
以上の要件を満たす場合、経済産業局に申請をして、認定を受ければ制度による支援を受けることができます。
このように、国の支援を受けられる中小企業事業承継制度は非常に利用価値があります。
会社経営がしんどくなってきたときには、債務整理関係に強い弁護士に相談してみることをお勧めします。
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