最近、フリーランスなどの方が法人化するときなどに人気を集めているのがバーチャルオフィスです。
バーチャルオフィスとは、実際の事務所を構えるのではなく、住所や電話番号などの情報借りることができるものです。普通に事務所を借りるのと比べて大幅にコストカットできるなどのメリットがあります。
しかしバーチャルオフィスは実際の事務所がないので、
「法人登記できないのでは?」
「違法なんじゃないの?」
と心配になりませんか?
今回は、バーチャルオフィスでの法人登記が違法になるのか、またバーチャルオフィス利用のメリットデメリットや活用方法について、元弁護士の私が解説します。
1.バーチャルオフィスとは

バーチャルオフィスとは、事務所の「住所」や「電話番号」などの連絡先だけを借りるシステムです。
通常、「事務所」を借りるときには「不動産賃貸借契約」を締結して、実際の事務所の引渡を受けて利用します。しかし、そうすると、毎月の賃料もかかりますし、業種によっては「実際の店舗は要らないのに、、家賃が無駄」と思いますよね。
そこでバーチャルオフィスを利用すると便利です。バーチャルオフィスの場合、住所や電話番号などを借りるだけなので、実際の事務所物件の引渡は受けません。連絡先を借りるだけなので、当然料金は格安となります。業者にもよりますが、だいたい月額15,000~30,000円程度となっていることが多いです。
通常、不動産物件を借りると10倍はするでしょうから、バーチャルオフィスで家賃が10分の1になれば、大幅なコストカットになります。
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2.バーチャルオフィスで法人登記できる
バーチャルオフィスの場合、実際の事務所が実在しないので、会社の登記ができないのではないか?と心配される方がおられます。
バーチャルオフィスでも法人登記は可能です。
法人登記の住所について「事務所の実態のある場所でなければならない」という決まりはないためです。
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしたとしても、違法ではありません。
登記申請後に摘発されたり何らかの追及を受けたりするおそれもないので、安心しましょう。
3.バーチャルオフィスで特定商取引法上の表示ができる

ネットショップなどを経営する場合「特定商取引法」にもとづいて、販売業者の連絡先等の情報を記載しなければなりません。
「バーチャルオフィスには実際の住所がないから無理なんじゃないの?」
と疑問に思いますよね?
特定商取引法にもとづく表示についても、バーチャルオフィスで対応可能です。
特定商取引法上の表示は、消費者が販売業者に連絡できるようにするためのものです。そして特定商取引法では、実際の住所などを表示していなくても、消費者からの請求があればいつでも表示できることが明らかになっていて、実際にそのように対応できるのであれば違法にはならない、とされています。
そこで、バーチャルオフィスを利用する場合、ホームページ上にバーチャルオフィスの電話番号や住所、メールアドレスなどを書いて「運営者の住所等の情報について、こちらの連絡先に開示請求していただけましたら、速やかに開示します」と表示しておけば、違法にはなりません。
特定商取引法にもとづく表示が必要な業種であっても問題なくバーチャルオフィスを利用できます。
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4.バーチャルオフィスで問題になる可能性のある業種

ただし、以下のような業種では、バーチャルオフィスの利用が問題になる可能性があります。
4-1.職業紹介業
職業紹介業では、都道府県の労働局で許可を受ける際に、実体のある事業所が必要となります。バーチャルオフィスでは許可されません。
4-2.人材派遣業
人材派遣業の場合にも実際の事務所が必要であり、バーチャルオフィスを利用できません。
4-3.士業(税理士、司法書士、弁護士など)
税理士や司法書士、弁護士などの場合にも、実際の事務所が必要となり、バーチャルオフィスは利用できません。
4-4.建設業
建設業も、許可を受けるときに「請負契約の見積や入札、契約締結などができる実体的な行為ができる事務所」が必要であり、バーチャルオフィスは利用できません。
4-5.古物商
古物商は公安委員会によって許可を受ける必要がありますが、そのためには「独立した営業所」が必要です。バーチャルオフィスには実体がないので、許可されません。
4-6.不動産業
不動産業を開業するときには都道府県の許可が必要ですが、そのためには独立した事務所が必要です。
バーチャルオフィスでは登録できません。
4-7.探偵業
探偵業を行うときには公安委員会への届出が必要ですが、その際事業所の記載が必要です。実態のある場所が必要なので、バーチャルオフィスでは対応できません。
以上のようにバーチャルオフィスを利用できない業種は、各種の許認可が必要となる業種が多いです。
それ以外の一般の法人や個人の場合、バーチャルオフィスを利用することにさして問題はないといえます。
5.バーチャルオフィスのメリットとデメリット
次に、バーチャルオフィスのメリットとデメリットをみてみましょう。
5-1.メリット
バーチャルオフィスを利用する最大のメリットは、大きくコストカットできることです。実際のオフィスを借りるのと比べると10分の1以下になります。また、コストがかからない分、事業縮小も簡単にできます。
都会の一等地にオフィスを借りても数万円で利用できるので、対外的にも見栄えが良くなります。
また、オフィスに導入する事務用品や家具、電話回線やネット回線などの工事が不要ですぐに業務開始できる点もメリットと言えます。
5-2.デメリット
デメリットは、上記のように各種の許認可を受けられないことと、法人名義の口座を開設しにくくなること、融資を受けにくくなる可能性があることです。
ただし、企業が一定の実績を上げた後であれば、その資料を持参すると金融機関も口座開設を認めてくれやすいですし、バーチャルオフィスであっても利用できる融資制度もあります。
6.バーチャルオフィスの利用に適している人

あなたが次のようなケースに該当するなら、是非ともバーチャルオフィスの利用を検討してみましょう。
- 電話代行サービスを使いたい個人事業主
- 外回りの営業が多い個人事業主
- 自宅で法人登記したくない個人事業主
- 都心の一等地に看板をかまえたい方
- 自宅の住所を公開したくない方
- ホームページに掲載する連絡先が必要な方
- 地方で仕事をしているけれども都心に事業展開するための拠点がほしい方
- 海外企業が日本法人を設立するとき
7.バーチャルオフィスの活用方法
また、以下のようなバーチャルオフィスの活用方法もあるので、参考にしてみてください。
- 商談やセミナーなどを行うための会議室スペースを格安で利用できる
- 大量に届く郵便物の管理や転送をしてもらえる
- 電話受付を、事務員を雇うより安く対応してもらい、電話の転送を受けられる
8.迷うならバーチャルオフィスを使ってみるべき
バーチャルオフィスを利用する場合、大きくコストカットできてスムーズに事業を開始できるメリットがあります。法人登記も問題なくできますし、通常一般の業種ならばほとんど不便を感じることもありません。
確かに許認可を受けられない、当初銀行口座を開設しにくいなどのデメリットがあります。
許認可を受けられない場合には諦めるしかありませんが、企業に信用がつけば融資は受けられるようになります。
不動産を借りると、賃料や保証金だけではなく内装を整える費用、家具などを入れる費用もかかるので、何百万円もの高額なお金が必要です。バーチャルオフィスなら月額15000円だけの負担で済むのに、あえて高額な不動産を借りるメリットはほとんどなく、極端な話、お金をどぶに捨てているのと同じです。
銀行口座は半年もたてば開設できますが、オフィス料金はこの先何年もかかり続けるので、どちらが得かは明白です。バーチャルオフィスはほとんど経費がかからないので、迷っているなら一度試してみて、ダメだったら、その時点で普通に不動産などを借りれば損失はありません。
これから法人化しようと考えているフリーランスの方などは、まずはバーチャルオフィスで開業することを是非とも検討してみて下さい。
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