ネット誹謗中傷

有名ブロガーHagexさん殺害事件を考える|ネットとリアル、分けられますか?

先日、有名ブロガーのHagexさん(本名 岡本顕一郎さん)という方が、ネットでトラブルになっていた相手からナイフで刺殺されるという、ショッキングな事件が起こりました。

この事件のことを知って、あなたはどう思いましたか?

「驚いたけど、自分とは関係ない」

「怖いとは思うけど、私は『顔バレ』していないから大丈夫」

「私はネットでトラブルになっていないから問題ない」

など、さまざまな感想を持たれたことでしょう。

しかし、今回の事件、決して他人事ではありません。

そもそも「ネット」と「リアル」を分けて考えることはできないし、直接ネットで攻撃されていなくても、自分でも気づかないうちに、知らず知らずの間に人の妬みや恨みを買っていることは充分にあるのです。

今回は、そんな話をしてみます。

1.Hagexさんの場合

今回、セミナー講師をして帰宅途中だったHagexさんを襲って殺害した容疑者は、Hagexさんとの間でネット上において大きなトラブルになっていたそうです。

Hagexさん自身が容疑者のことを「低能先生」などと言って、二人の間ではかなり激しい応酬がありました。そうしたやりとりが高じて、容疑者の方はHagexさんに対し、リアルの殺害行為に及んでしまったのです。

容疑者は、犯行後に「ネット弁慶を卒業する」と言っていたそうです。

「ネット弁慶を卒業。」

この言葉はとても大きな意味を持っているように思います。

ネットがリアルになってしまった瞬間を顕しているからです。

Twitterやブログなど、ネットを使っているあなたは、きっと「ネット」と「リアル」を分けているつもりになっていますよね?

でも、完全にネットとリアルを分けることは不可能です。ネットを使っているとしても、使っているのは「リアルな人間」だからです。

ネット上で恨みを買えば、リアルで殺される可能性がある。

今回の事件は、そういった現実を示したものと言えます。

2.なぜ、顔出ししてはいけないのか?

この事件は、奇しくも「ジャックナイトのオフ会」の翌日に発生しました。

ジャックナイトのオフ会は、非常に大規模なブロガーやアフィリエイターなどのネット利用者のオフ会で、ふだんTwitterなどで顔を合わせている人たちが集まって大盛況になっていたようです。

私は参加していませんが、Twitterでもその話題で持ちきりになっていました。

そこで私が始めて知ったことがあります。

「ブロガー・アフィリエイターなどの人は、顔出しNGな人が多い」

ということです。

オフ会で撮影された写真についても、通常の肖像権保護以上に大変に神経質な扱いとなっており、モザイクがかけられたりしていました。

とても有名なブロガーの方なども、絶対に顔を見られないように対策を練っていたようです。

私が普段からめちゃくちゃ面白いと思っていて、ファンも多いスーパーブロガーのヒトデさん(私自身も大ファンです。勝手に引用してごめんなさい。不都合がありましたら消すのでおっしゃって下さい)も、Twitterで、「(オフ会に)着ぐるみを着て参加した」というようなことをおっしゃっていて、絶対に顔出しはNGと言っておられました。

これを見て、私は単純に、とても不思議に思いました。

「どうしてこんなに人気者で、誰からも尊敬されていて、文句なしに素敵な方なのに、顔を隠す必要があるんだろう?」

そして、実際にヒトデさんに聞いてみたところ、丁寧に回答をしていただけました。

また、他にも、顔出しNGの理由を教えてくれた方がいらっしゃいました。

私はこれらのご意見を見て

「ブログでこんなに有名になって尊敬を集めて収益だって上がっていて、その辺の会社役員なんかよりよほど稼いでいても、顔も出せないなんて…」

正直、不思議な印象を持ちました。私はずっとリアル社会で生きてきて、顔出しが当たり前の世界にいたので、顔出しNGという感覚をどうにも理解しにくいです。

ただ、ネットを使っている方たちが、「ネットとリアルを分けたい」という気持ちは、私が想像していたよりはるかに強いものなのだと感じました。

 

また、以前に主婦のブロガーの方が言っているのを見たのですが、ブロガーの方は、かなり収益を出して成功している方でも、周囲のリアルの友人にはほとんどそのことを言っていない例が多いようです。ブログをしていることすら言わない方が多数のようでした。

これについても私は不思議で

「なぜ言ってはいけないんだろう?悪いことをしているわけではないのに」

という感想を持っていました。

3.顔出ししていなくても、たどればわかる

ブロガーやアフィリエイターなどの方は、私が想像するよりずっと「ネット」と「リアル」を分けたいという気持ちが非常に強いのです。

だから絶対に「顔出し」がNGで、ネット上でキャラクターを作っているのでしょう。

このことで、リスクマネジメントしているつもりかも知れません。

しかし、実際に発言しているのが人間である以上、どうしてもぼろがでるものです。本気でターゲットを絞ってその人の発言内容やブログなどを漏らさず四六時中観察をしていたら、だんだんとその人の「リアル」が見えてくるものです。

起きている時間帯、関心のある対象、家族構成、居住地域、言葉の端々をつなぎ合わせていくと、だんだんとその人の輪郭が見えてきます。自分では隠しているつもりでも、それこそストーカーのように注視し続けたらだいたいのことがわかります。

顔出しさえしていなかったらリアルとネットを分けられるという考えは甘いです。

4.直接トラブルになっていなくても、恨まれている可能性がある

もう1つ、「トラブルになっている相手がいないから、自分は大丈夫」と考えている方もおられるでしょう。

しかし、その考えも危険です。

ネットは、いろいろな人が見ています。自分が想像しているよりはるかに多くの人が自分を見ていると思った方が良いです。

もちろん好意的な目で見ている人もいますが、そうでない人もいます。中には、「こいつ腹立つわ!」「殺したいわ!」と思いながらも、何も発言せずに画面の向こうから「じっ」と見つめ続けている人がいるかも知れません。

たとえば自己アピールが強すぎる人、自慢げで目立っている人は、ファンも多いかもしれませんが、妬まれやすいです。

「憎まれっ子世にはばかる」などと言いますが、はばかっているだけなら良いですが、妬まれて実害を加えられたらどうしようもありません。

実際、SNSを利用するときに、「本当は自分の気に要らない人をミュートしてしまえば不快な思いをせずに済むとわかっていても、どうしてもむかつく相手が気になって見てしまう方が多いのではないでしょうか?

正直、私もそういうことで、疲れることがあります。

以前にそういった内容のツイートをしたら、結構たくさんの人が共感してくれました。

また、このようなご意見もあります。

私のツイートに反応して下さった方のものです。
元のツイート

私も全くその通りだと思います。本人に「自覚がない」のが一番の問題です。

たとえば収益自慢や仕事忙しい自慢、頑張ってる自慢などをして周りからちやほやされていても、それを不快に感じている人もいるんです。ところが本人はまったく気づいていない。見えない間に大量の敵を作ります。

敵は、いわゆる「アンチ」なのかもしれません。人気者になったらアンチがたくさんできるのは仕方がないと言います。

確かに一定までは仕方がないとも言えますが、相手を無用に煽っていることもあるのではないでしょうか?

「直接攻撃されていない」「直接何も言われていない」から大丈夫というわけにはいかないのです。

5.身を守るためにどうすべきか

このようなリスクを考えたとき、やはり身を守るためには無用に人を煽ったり人の嫉妬心を起こさせたりするような発言は控えた方が良いのでしょうね。

また、特に有名な方の場合などには、自宅にSECOMなどを入れて、家族全員が常に防犯ブザーを持ち歩く程度の備えはして置くべきでしょう。

6.私はネットが好き|今後の適正化に期待したい

今回、ネットに否定的に見える意見を書いてしまいましたが、基本的に私は、ネットはすばらしいツールだと思っています。私自身の可能性を大きく広げてくれたのもネットです。

ただし、使いようによっては悪になるとも思っています。

普通の人が罪悪感なしに詐欺まがいのことも簡単にできてしまいますし、規制が追いついていないのでノールールでやりたい放題、嘘つき放題のカオス状態になっているように感じることが多々あります。

もう少しきちんと利用方法が適正化されて、ネットの良い面が残り悪い面が早期に駆逐されたら良いなぁ、と日頃から考えています。

(なお、今回ツイートを引用させていただいた方で、「やめてほしい」という方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただけましたらすぐに削除いたしますので、おっしゃって下さい。ご不快な思いをさせてしまいましたら申し訳ありません)

ABOUT ME
福谷陽子
弁護士としての経験を活かして、法律・不動産の専門記事を執筆。多くの法律事務所様や不動産会社様、法律・不動産系メディア様からご依頼をお受けしております。 難しい法律や税務、不動産の知識をわかりやすく伝えるのがモットー。 何より目指すのはお客様の利益です。

フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol2

フリーランスのための法律を元弁護士が解説!vol3