刑事事件

再審が開始するタイミングと要件・死後にも開かれる理由を元弁護士が解説!

先日、34年前に滋賀県日野町で発生した強盗殺人事件の犯人として、死亡するまで服役していた阪原弘元さんの再審が認められました。既にご本人は死亡しているため「死後再審」として話題になっています。

最近では、過去に有罪が確定した殺人事件などの重大事件で再審が認められて無罪になるケースが増えていますが、そもそも再審とはどのような制度で、受刑者の死後に再審を認める意味は何なのでしょうか?

今回は、「開かずの扉」とも言われてきた再審の要件や意味について、元弁護士の立場から解説します。

1.再審とは

最近、テレビのニュースなどでもよく耳にすることのある「再審」ですが、そもそも再審とは、何なのでしょうか?

実は、再審は、世間で非常に誤解されていることの多い制度です。

再審というと、刑事事件のやり直しというイメージがあります。そして、多くの方は、再審の裁判の中で、「過去の殺人事件などの審理をやり直している」と考えています。

つまり、再審によって犯人が実はやっていないことが明らかになったら無罪となり、やっていないことを証明できなかったら再審でも有罪のままになる、と理解しているのです。

しかし、この考え方は間違いです。

再審は、「無罪がほぼ明らかになったとき」にしか開かれないからです。

つまり、再審を開いてもらうためには、先に「ほとんど無罪」であることを証明して裁判所に納得してもらう必要があります。

再審してみないと、無罪かどうかわからないというのでは、再審が始まらないのです。

再審の中で無罪かどうか調べるのではなく、「無罪を証明して初めて再審をしてもらえる」と考えるとだいたい正しいです。

一般には、再審の審理の中で有罪か無罪か判断するものと思われているので、それは不正確ということです。


2.再審の要件

再審が認められるのは、以下のようなケースです。

  • 判決で用いられた証拠が偽造だった
  • 判決のもとになった証言が虚偽であった
  • 被害者による告訴が虚偽である、虚偽告訴した人が有罪になった
  • 判決のもとになった他の事件の裁判内容が変更された
  • 特許侵害のる罪で、権利自体が無効になった
  • 無罪やもっと軽い刑にすべき明らかな証拠を新たに発見した
  • 判決を下した裁判官、事件にかかわった検察官や警察官が裁判手続きに関して犯罪行為を行った

つまり、受刑者側が上記のようなことを証明しない限り、再審を開始してもらうこともできないのです。

このようなことは大変難しいので、再審が開かれるケースは非常にレアです。

多くの受刑者が再審請求をしますが、ほとんど却下されます。その意味で、再審事件は「開かずの扉」と呼ばれます。

申立をしても、再審を開始すらしてもらえないためです。

3.再審が増えている理由

ただ、過去には実際に「開かずの扉」であった再審ですが、最近では再審が認められるケースが増えています。

これは、1つには科学捜査の発展があると考えられます。

たとえばDNA鑑定によって再審が認められるケースなどがあります。

今回の滋賀県日野町の強盗殺人事件では、受刑者の自白が強制されたものであることや、新たな証拠としての写真などが決め手になって再審が認められたようです。

4.死後再審が認められる意味

ところで、今回の滋賀県日野町の阪原弘元受刑者は、2011年に75歳で既に死亡しています。それが2018年になって、ようやく再審が認められ、おそらく今後無罪になる可能性が高いです。

ご本人は48歳くらいのときに強盗殺人犯と間違われて逮捕され、30年近く服役させられたまま獄死したのですから大変な人権侵害で、このようなことは決してあってはならないことです。

ただ、ここで気になるのは

「ご本人が死亡してから再審が認められても意味がないのでは?」

ということではないでしょうか?



確かに、刑事被告人(犯人)が死亡したときには、それ以上刑事事件を進めても意味がないので、刑事裁判は終わります。死亡している人に刑罰を与えることはできないからです。

これに対し、再審請求の場合には、本人の死後にも認められます。実は、今回の阪原さんの件も、ご本人の死後2012年に遺族が申し立てたものです。

「一体何のためなんだろう?」

と思いませんか?

このように、死後再審を認めるのは、遺族のためです。

考えてみてもらったらわかりますが、殺人犯や強盗殺人犯の家族というと、世間からとんでもない差別を受けます。

偏見に満ちた扱いを受けますし、どこへ行っても「殺人者(犯罪者)の家族」扱いです。

就職、結婚、学校、会社、すべての場面で不利益を受け続けることになるのです。殺人犯の娘と言うだけで一生結婚できない例もあります。

そこで本人が死亡したとしても、遺族のために再審を認めてその生活や名誉を守る必要があるのです。

もちろん、本人の名誉を守るという意味合いもありますが、それよりも生きている遺族への影響の方が多いでしょう。そのようなこともあり、今回の阪本さんの遺族も再審を申し立てたのだと思われます。

それにしても、本人が75歳で獄死して、その後7年も経ってから再審が認められるというのはやるせない思いになりますね。お気の毒すぎますし、酷い人権侵害だと思います。

えん罪を0にするのが不可能というのはわかりますが、自白強要などによるえん罪は防がなければならないと感じます。

このようなこともあり、もしも刑事事件になっているなら、早急に弁護士を依頼して適切な弁護を受ける必要があります。

困ったときには、弁護士に依頼しましょう。ウェブ上で簡単に弁護士を探せるサービスがあるので、是非とも利用して下さい。こちらの刑事事件弁護士ナビを利用すると、無料で全国から刑事事件に強い弁護士を探せます。


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福谷陽子
弁護士としての経験を活かして、法律・不動産の専門記事を執筆。多くの法律事務所様や不動産会社様、法律・不動産系メディア様からご依頼をお受けしております。 難しい法律や税務、不動産の知識をわかりやすく伝えるのがモットー。 何より目指すのはお客様の利益です。

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